単純疱疹(再発) 口唇ヘルペスの予防治療 ―1 day treatment―

再発を繰り返す人は、唇にぶつぶつ(水疱)ができる前に、ピリピリ、チクチク、ムズムズなどの予兆がわかるので、6時間以内に常備しておいた抗ウイルス薬を内服します。治療は1日間で保険適応です。自分で治療の判断をするのでPIT(Patient Initiated Therapy)とも呼びます。病院に受診したときにPIT用を併せて処方してもらえば、結果的に財布にもやさしくなります。口唇ヘルペス(単純疱疹)を起こすのは単純ヘルペスで、帯状疱疹とは別のウイルスです。ワクチンはありません。でも帯状疱疹と同じように神経根に潜んでいるので、再発するときは左右どちらかです。唇の両側にたくさん小水疱が並ぶのは、リップクリームなどによる皮膚炎(かぶれ)の可能性が高いです。ヘルペスウイルスは体から離れても3時間は生存します。口唇ヘルペスができているときは、頬ずりやキスは我慢して、食器やタオルは共用しないようにしましょう。

今まで経験したことのない胸の痛み ―DIDO時間-

ある日曜日の診療は、はたして救急外来みたいになりました。心筋梗塞はカテーテル治療までの時間が勝負です。病院のドアを入ってからカテーテル(バルーン)治療までのDTB(Door To Balloon)時間を90分以内にすると、心臓のダメージが少なくてすみます。すでに日本のカテーテル治療技術はすぐれていますから、いかに治療のできない病院での滞在時間を短くするかが、次の一手です。病院のドアから入ってドアからでるDIDO(door-in to door-out time)時間と呼びます。開業医はすぐ心電図をとって救急車を呼べということです。市内なら救急車に乗ってしまえば大概15分以内で緊急治療ができる病院へ着けます。ところが、日本人は痛みを我慢しがちです。さらにコロナ禍になって、心筋梗塞になってから受診までの時間が、2時間台から4時間に伸びてしまいました。いくらDTB時間やDIDO時間を短くしても、病院へ来る前の時間が長ければ、治療効果が減ってしまします。兎にも角にも、今まで経験したことがない胸痛が15分続くときは救急車を呼んでください。DHB(できるだけ早く病院へ)です。

心当たりのない体の片側の痛み ―そこに湿布を貼る前に―

腰痛だと思って湿布を貼り、ぶつぶつができても湿布かぶれだと思い込んでいた人がいます。

帯状疱疹の初期は、皮疹が出る前に痛みだけが数日間続くことがあります。2014年に水痘ワクチンが定期接種となってから、水痘ウイルスに出会って免疫が刺激される(ブースター効果)こともなく、コロナ禍のストレスも加わり、若年者(※)にも帯状疱疹が増えている印象があります。早期発見・早期治療が帯状疱疹後神経痛を防ぐポイントにもなります。90%の日本人は、水痘ウイルスを体のどこかの神経節に持っていますから、心当たりのない体の片側の痛みが出たときは、皮膚をよく見て、異常があればすぐ診察を受けましょう。

(※)アメリカで実施されていて日本で実施されていない「大人の定期予防接種」には、破傷風、百日咳、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふく)、子宮頸がん等(ヒトパピローマウイルス)、帯状疱疹などがあります。