単純疱疹(初感染) ―大人にも起こるヘルペス性歯肉口内炎―

口唇ヘルペスは、神経に潜んでいた単純ウイルスが再び活動することで起こる「再発」です。初めての感染はというと、症状が出ないことが多いので、いつ感染したかわかりません。しかし時に「ヘルペス歯肉口内炎」を起こすことがあります。最初の2日間ほど高熱が出て、何だろうと思っていると、歯茎がはれてきて口内炎を生じ、歯磨きで出血して口臭も強くなります。単純ヘルペスは、ほとんどが乳幼児期(6か月~3歳)に親からうつるので、本来「ヘルペス歯肉口内炎」は子供の病気です。しかし近年は、“虫歯は感染症である”という認識も広まり、親の食べ物の口移しもしなくなり、孫にキスしようとするおじいちゃんに腹が立つようになりました。ある意味“きれいに”育てられた今の若い人たちの半数は、実は単純ヘルペスに罹っていません。その人たちは、今後ウイルスに接触すれば、「ヘルペス歯肉口内炎」を発症するかもしれないし、ずっとウイルスに出会わなければ、生涯口唇ヘルペスを経験せずに済む可能性もあります。

単純疱疹(再発) 口唇ヘルペスの予防治療 ―1 day treatment―

再発を繰り返す人は、唇にぶつぶつ(水疱)ができる前に、ピリピリ、チクチク、ムズムズなどの予兆がわかるので、6時間以内に常備しておいた抗ウイルス薬を内服します。治療は1日間で保険適応です。自分で治療の判断をするのでPIT(Patient Initiated Therapy)とも呼びます。病院に受診したときにPIT用を併せて処方してもらえば、結果的に財布にもやさしくなります。口唇ヘルペス(単純疱疹)を起こすのは単純ヘルペスで、帯状疱疹とは別のウイルスです。ワクチンはありません。でも帯状疱疹と同じように神経根に潜んでいるので、再発するときは左右どちらかです。唇の両側にたくさん小水疱が並ぶのは、リップクリームなどによる皮膚炎(かぶれ)の可能性が高いです。ヘルペスウイルスは体から離れても3時間は生存します。口唇ヘルペスができているときは、頬ずりやキスは我慢して、食器やタオルは共用しないようにしましょう。

今まで経験したことのない胸の痛み ―DIDO時間-

ある日曜日の診療は、はたして救急外来みたいになりました。心筋梗塞はカテーテル治療までの時間が勝負です。病院のドアを入ってからカテーテル(バルーン)治療までのDTB(Door To Balloon)時間を90分以内にすると、心臓のダメージが少なくてすみます。すでに日本のカテーテル治療技術はすぐれていますから、いかに治療のできない病院での滞在時間を短くするかが、次の一手です。病院のドアから入ってドアからでるDIDO(door-in to door-out time)時間と呼びます。開業医はすぐ心電図をとって救急車を呼べということです。市内なら救急車に乗ってしまえば大概15分以内で緊急治療ができる病院へ着けます。ところが、日本人は痛みを我慢しがちです。さらにコロナ禍になって、心筋梗塞になってから受診までの時間が、2時間台から4時間に伸びてしまいました。いくらDTB時間やDIDO時間を短くしても、病院へ来る前の時間が長ければ、治療効果が減ってしまします。兎にも角にも、今まで経験したことがない胸痛が15分続くときは救急車を呼んでください。DHB(できるだけ早く病院へ)です。