2022年2月

単純疱疹(初感染) ―大人にも起こるヘルペス性歯肉口内炎―

口唇ヘルペスは、神経に潜んでいた単純ウイルスが再び活動することで起こる「再発」です。初めての感染はというと、症状が出ないことが多いので、いつ感染したかわかりません。しかし時に「ヘルペス歯肉口内炎」を起こすことがあります。最初の2日間ほど高熱が出て、何だろうと思っていると、歯茎がはれてきて口内炎を生じ、歯磨きで出血して口臭も強くなります。単純ヘルペスは、ほとんどが乳幼児期(6か月~3歳)に親からうつるので、本来「ヘルペス歯肉口内炎」は子供の病気です。しかし近年は、“虫歯は感染症である”という認識も広まり、親の食べ物の口移しもしなくなり、孫にキスしようとするおじいちゃんに腹が立つようになりました。ある意味“きれいに”育てられた今の若い人たちの半数は、実は単純ヘルペスに罹っていません。その人たちは、今後ウイルスに接触すれば、「ヘルペス歯肉口内炎」を発症するかもしれないし、ずっとウイルスに出会わなければ、生涯口唇ヘルペスを経験せずに済む可能性もあります。

単純疱疹(再発) 口唇ヘルペスの予防治療 ―1 day treatment―

再発を繰り返す人は、唇にぶつぶつ(水疱)ができる前に、ピリピリ、チクチク、ムズムズなどの予兆がわかるので、6時間以内に常備しておいた抗ウイルス薬を内服します。治療は1日間で保険適応です。自分で治療の判断をするのでPIT(Patient Initiated Therapy)とも呼びます。病院に受診したときにPIT用を併せて処方してもらえば、結果的に財布にもやさしくなります。口唇ヘルペス(単純疱疹)を起こすのは単純ヘルペスで、帯状疱疹とは別のウイルスです。ワクチンはありません。でも帯状疱疹と同じように神経根に潜んでいるので、再発するときは左右どちらかです。唇の両側にたくさん小水疱が並ぶのは、リップクリームなどによる皮膚炎(かぶれ)の可能性が高いです。ヘルペスウイルスは体から離れても3時間は生存します。口唇ヘルペスができているときは、頬ずりやキスは我慢して、食器やタオルは共用しないようにしましょう。