飲み込まれたお餅

正月のお餅は、本人や各家庭の食べ方の慣習もあり、安全を考えて餅を小さく切ると怒る人もいるでしょう。

60℃の雑煮の餅はやわらかいですが、口の中で温度が下がると、硬くなり付着しやすくなります(雑煮を食べたお椀をみればわかります)。高齢者の喉にもお椀と同じことが起こりえます。健常人は、咀嚼して唾液とよく混ぜてから、適切なタイミングで飲み込めますが、高齢者は嚙む力も飲み込む反射も弱く唾液量も少なく、入れ歯にくっつくからと入れ歯を外して食べるなら、危険なのは明白です。仕方ないので飲み込むことになります。

餅の塊は、喉を幸いに通過しても、塊のまま胃を過ぎて小腸に到達します。そこで通過が滞って腹痛などの症状が出ます。実際、正月の胃もたれは餅が原因のことが多いです。さらに悪化すれば腸閉塞になります。

お餅をどうしても食べなくてはいけないなら、家族との久しぶりの会話を一旦中断して、噛むことに専念してください。大根おろし(でんぷんを分解する酵素ジアスターゼ)をまず口に含むのもよいでしょう。

(CT: 小腸にある餅の塊 餅はCTで白く映ります 黄色矢印)