数日で治るのだからインフルエンザと同じだと考えている人がいます。しかしインフルエンザに後遺症はありません。今、若い人ほどコロナの後遺症に悩んでいます。5人に1人は、体が勝手にコロナウイルスの幻影(破片)と戦い続けています。long COVIDと呼びます、第5波以降の若者に多く発生しています。
コロナウイルスは、HIV(エイズ)と同じように免疫をつかさどるT細胞に感染します。免疫のバランスが崩れてアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態が「倦怠感」を生み アクセルもブレーキも反応しない状態が「味覚・嗅覚障害」などを起こしているようです。T細胞に感染するとは嫌な感じです。
―気になる後遺症には、以下があります―
- 体位性頻脈症候群:休んでいても脈が常に100以上あって 立ち上がると脈がさらに増える
- 非びらん性胃食道逆流症:胃カメラでは異常がなく、放散痛として胸痛や、息切れ、動悸、不眠が起こる
- 慢性疲労症候群:例えば、調子が良いと感じて1日活動すると、翌日は全く動けなくなる
- メモリーロス:頭の中が霧がかかったようにかすんでいる
簡単な暗算(2桁の足し算)ができない 思い出せない 字を読んでも頭に入ってこないなど
―つまりコロナ後遺症は―
- 原因がまだよくわかっていない
- コロナ感染中よりもつらくて長い
- 周囲から怠けていると思われて理解が得られない
- 後遺症は公費負担がなくお金がかかる
治療は、症状に対する治療と生活のアドバイスになります。考えられることをやっていくしかありません。
決してコロナはインフルエンザと同じではありません。
1980年代の金沢大学第一外科岩教授の講義は、2学年200人の合同で、ポリクリの6人のグループが一番前に座らされて、胸のレントゲン写真、心電図、そして本物の患者さん(時には赤ちゃん)が講義室にきて聴診をして、この3つの情報だけで病気を診断し、教授から質問攻めに遭うという恐ろしいものでした。「聴診器で最初に何を聴くのだ?」との問いに答えられるまで先に進みませんでした。聴診の所見は、「胸骨右縁第2肋間に最強点を有するLevine2/Ⅵの収縮期駆出性雑音を聴取します」というふうに答えなくてはだめでした。スライド講義はというと、ほとんどがWPW症候群で、全国からが受診していることを示す日本地図の記憶しかありません。
「心音(心雑音)を捕りにいく」―開業医にとって大事なことだなと追憶しています。
口唇ヘルペスは、神経に潜んでいた単純ウイルスが再び活動することで起こる「再発」です。初めての感染はというと、症状が出ないことが多いので、いつ感染したかわかりません。しかし時に「ヘルペス歯肉口内炎」を起こすことがあります。最初の2日間ほど高熱が出て、何だろうと思っていると、歯茎がはれてきて口内炎を生じ、歯磨きで出血して口臭も強くなります。単純ヘルペスは、ほとんどが乳幼児期(6か月~3歳)に親からうつるので、本来「ヘルペス歯肉口内炎」は子供の病気です。しかし近年は、“虫歯は感染症である”という認識も広まり、親の食べ物の口移しもしなくなり、孫にキスしようとするおじいちゃんに腹が立つようになりました。ある意味“きれいに”育てられた今の若い人たちの半数は、実は単純ヘルペスに罹っていません。その人たちは、今後ウイルスに接触すれば、「ヘルペス歯肉口内炎」を発症するかもしれないし、ずっとウイルスに出会わなければ、生涯口唇ヘルペスを経験せずに済む可能性もあります。